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絶縁耐圧とは?絶縁抵抗との違いや重要性を説明

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絶縁性能の指標として、絶縁耐圧と絶縁抵抗が挙げられますが、両者の観点はそれぞれ異なります。絶縁耐圧とは、電気機器が耐えられる電圧の限界を示す指標であるのに対して、絶縁抵抗は電流の流れにくさを表す指標です。電気機器を安全に使用するためには、これらを確認することが大切です。

この記事では、絶縁耐圧と絶縁抵抗の意味や、それぞれの違い、試験・測定を行う方法、注意点などを解説します。絶縁耐圧の理解を深め、自社に適した試験・測定を実施しましょう。

絶縁耐圧とは?

絶縁耐圧は、電気製品や部品などの絶縁性能を判定する指標の一つです。ユーザーが安全に使用できるよう、電気機器は十分な絶縁耐圧を持っていなければなりません。

以下で詳しく解説します。

絶縁耐圧は絶縁の強度を表すもの

絶縁耐圧とは、電気機器や部品が絶縁破壊することなく一定時間耐えられる電圧の限界を示す指標です。

もし絶縁体に規定の電圧に耐え得る力がなく、破壊されるようなことがあれば、使用する人や周囲の環境の安全性を脅かすことになってしまいます。絶縁不良により生じると考えられる事故は感電です。漏電している製品に人が触れれば感電する恐れがあり、けがや死亡事故にもつながりかねません。さらに、絶縁不良を起こした箇所が発熱することがあれば、環境によっては火災や爆発の事故が発生するリスクも考えられます。

以上のことから、絶縁耐圧は電気を用いる機器の安全性をしっかりと確保するために重要な要素といえます。なお、絶縁耐圧は、絶縁耐力もしくは耐電圧とも呼ばれています。

絶縁耐圧試験の目的

絶縁耐圧試験を実施する目的は、電気機器や部品の絶縁体が規定の電圧に耐えられるかどうかを確認することです。絶縁耐圧試験に通ったものだけを供給することで、ユーザーが絶縁不良による事故等の危険にさらされる事態を未然に防ぎます。

実際の絶縁耐圧試験では、高い電圧を一定の時間、印加します。試験中、本来流れるべきではない箇所に電流が検出されたり、フラッシュオーバー(火花放電:印加する電圧の限界を超えると火花とともに放電する現象)をはじめとする異常が発生したりすると、絶縁の強度不足や不良があるということになります。絶縁耐圧試験で印加される電圧の高さや時間、箇所は機器や機種などによって異なり、それぞれの規定に従って行われます。

絶縁耐圧試験は、安全規格によって、電気製品の製造者に義務付けられている試験の一つです。製造工程において、全数(全ての製品)の絶縁耐圧試験の実施が義務として求められている規格も数多くあります。

絶縁抵抗とは?

絶縁抵抗もまた、電気機器や部品などの絶縁性能を測る指標となるものです。絶縁抵抗を測定する大きな理由は絶縁耐圧と似ていますが、測定する内容は異なります。

絶縁抵抗は電気の流れにくさを示すもの

絶縁抵抗は、電気機器や部品などに施されている絶縁が、電流に対してどれほどの流れにくさ、つまり抵抗があるのかを数値で示すものです。

電気を用いる製品は一般に、電気を通す必要のある箇所には導体(電気が流れやすい物質)が使用され、電気を通したくない箇所には絶縁体(電気が流れにくい物質)が使用されています。導体は金属である銅やアルミニウム、鉄など、絶縁体はガラスやゴム、プラスチック、ポリエステルなどが代表的です。

絶縁体は、本来であれば規定の絶縁抵抗値を示しますが、紫外線や温度・湿度、振動・衝撃による劣化・損傷によって性能が低下する恐れがあります。このような場合、絶縁不良が生じ、絶縁抵抗値が低くなります。規定より低い絶縁抵抗値は電流の流れやすい状態を意味し、漏電しやすいことを示唆するものです。漏電の可能性がある電気機器は、感電や火災などを引き起こす危険性があるため、使用を避けなければなりません。

なお、電気抵抗の単位としてはΩ(オーム)やMΩ(メガオーム=100万オーム)が用いられます。また、絶縁抵抗は基本的に高い値を示すため、多くの場合は、専用の絶縁抵抗計(メガー)が使用されます。

絶縁抵抗測定の目的

絶縁抵抗測定を実施する目的は、電気機器や部品の絶縁抵抗を数値として把握し、規定の数値を超えているかどうかを確認することです。絶縁抵抗が規定の数値を超えていれば、絶縁体が十分な役割を果たしていると判断できます。

絶縁耐圧試験も絶縁抵抗測定も、ユーザーを危険から守るという目的は同じです。双方の違いとして、絶縁耐圧試験が高い電圧を流して絶縁の強度を確かめるのに対し、絶縁抵抗測定は電気抵抗の数値で絶縁状態の良・不良を判断します。 

絶縁抵抗は、絶縁体に一定の電圧を印加し、漏れる小さな電流を測定して、2つの数値から算出されます。計算式は以下の通りです。

絶縁抵抗[MΩ]=印加する電圧[V]÷流れる電流[μA]

「電気設備に関する技術基準を定める省令」により、一般家庭で使用されることの多い低圧電力の条件において、絶縁抵抗は次の数値以上であることが定められています(※)。

電路の使用電圧の区分絶縁抵抗値
300V以下対地電圧が150V以下の場合0.1MΩ
その他の場合0.2MΩ
300Vを超えるもの0.4MΩ

数値を下回る場合は、十分な絶縁状態が維持できていないことを意味しています。絶縁抵抗の測定は、電気機器の製造・出荷前の検査だけでなく、保守や維持管理にも有効な手段です。

※参考:e-Gov法令検索.「通商産業省電気設備に関する技術基準を定める省令」

絶縁耐圧試験方法

絶縁耐圧試験は、耐圧試験器などを用いて安全性に留意しながら実施する必要があります。絶縁耐圧試験を行う方法や注意点を見ていきましょう。

絶縁耐圧試験を行う手順

絶縁耐圧試験を行う方法として、一般的な絶縁耐圧器を使う手順を紹介します。

  1. 対象の電気機器の2箇所に絶縁耐圧器のテストリードを接続する
  2. 絶縁耐圧器で遮断電流の数値を設定する

※遮断電流(試験上限値)とは、試験合否の基準となる漏れ電流値のこと

  1. 次に、絶縁耐圧器で電圧を印加する時間を設定する
  2. 絶縁耐圧器で印加する電圧の数値も設定する

※耐圧試験器によっては、印加する電圧を試験開始後に手動で設定するケースもある

  1. 絶縁耐圧器の開始スイッチを入れる
  2. 絶縁耐圧器の試験結果を確認する(対象の電気機器や部品に、絶縁破壊やフラッシュオーバーなどの異常が発生していないかを併せて確かめる)

絶縁耐圧試験に関する規格の一例

スイッチング電源の規格の一例で、絶縁耐圧試験に関する内容の要点を紹介します。なお以下はあくまでも例であり、詳細は機器によって異なるため注意しましょう(※)。

電圧は、0Vから1秒ごとに500Vずつ規定電圧まで上昇させ、1分維持した後に0Vまで徐々に下げる

● 量産する場合は、規定と同じ電圧で1秒から4秒の印加でも可

● 入力端子の間、出力端子の間はそれぞれショートさせておく

● 直流電圧を用いる場合は、交流電圧のピーク値と同じ電圧にする

試験が行われるのは、入力端子と出力端子の間、入力端子とフレームグランド(FG間)、出力端子とフレームグランド(FG)の間などです。

※参考:JEITA.「JEITA RC-9131D スイッチング電源試験方法(AC-DC)」.P24-25

絶縁耐圧試験を実施する上での注意点

高い電圧を用いる絶縁耐圧試験は、実施する上で注意したい点があります。

安全対策をしっかりと行う

絶縁耐圧試験を実施する際は、万が一の感電リスクを下げるために、絶縁用の保護手袋を着用しましょう。

絶縁耐圧試験で負荷をかけすぎないようにする

絶縁耐圧試験では、対象の電気機器や部品に負荷をかけすぎないことも大切です。長い時間、高い電圧で印加すると、試験の影響で部品が劣化したり破損したりすることも考えられます。

絶縁抵抗測定方法

絶縁抵抗測定は、測定する対象に適切な絶縁抵抗計を用いて行います。絶縁抵抗計は、扱える電圧レンジの範囲が異なるさまざまなモデルがあり、不適切な電圧レンジでは正しく測定できません。アナログの他にデジタルの絶縁抵抗計もあり、製品によっては複数の電圧レンジの切り替えが必要です。

絶縁抵抗測定を行う手順

絶縁抵抗測定を行う方法として、一般的な絶縁抵抗計を使用する手順を紹介します。

  1. まず絶縁抵抗計に、動作に必要なバッテリーがあることを確認する
  2. 対象の測定を行うのに適切な電圧レンジに切り替える
  3. 絶縁抵抗計のゼロ確認を行う

※絶縁抵抗計のテストリード同士をつなぎ、「0MΩ」と表示されれば可

  1. 測定を行う対象が停電状態(電圧のない状態)であることを確認する

※通電から停電にした場合は、確実に停電状態になっているかどうか、検電器でのチェックが必要

  1. 対象にリードの先端を当てて、絶縁抵抗計が示す数値を読み取る

絶縁抵抗測定に関する規格の一例

以下は、スイッチング電源の規格の一例であり、絶縁抵抗測定についての内容の要点を紹介します(※)。なお、これは一例であり、機器によって異なります。

● 入力端子の間、出力端子の間はそれぞれショートさせておく

● 基本的には500V絶縁抵抗計を用いて測定する

入力端子と出力端子の間、入力端子とフレームグランド(FG)間、出力端子とフレームグランド(FG)の間などで測定が行われます。

※参考:JEITA.「JEITA RC-9141B スイッチング電源試験方法(DC-DC)」P17

絶縁抵抗測定を実施する上での注意点

絶縁抵抗測定を実施する上では、次の点に注意しましょう。

安全対策をしっかりと行う

絶縁抵抗測定を実施する際は、まず絶縁用の保護手袋を着用してから作業を始めましょう。絶縁手袋を着用することで、万が一のトラブルのときも感電リスクを抑えられます。

絶縁抵抗計そのもののチェックを忘れない

測定前に絶縁抵抗計そのもののチェックを忘れず行いましょう。特にアナログの絶縁抵抗計を使い、事前のゼロ確認で針が「0MΩ」を示さない場合は、調整が必要です。ゼロ確認ができていないと、正しい絶縁抵抗値が測定できない恐れがあります。

測定の対象をきれいにしておく

絶縁抵抗測定は、既存の電気機器や回路の保守・維持管理の目的でも実施されます。測定の対象にホコリや汚れなどが付いている場合、絶縁抵抗計が正確な数値を示すとは限りません。測定前に対象をきれいに清掃しておくようにしましょう。

安全性確保のために重要な絶縁耐圧と絶縁抵抗

絶縁性能は、電気を使用する機器の安全性を確かめるためにとても重要です。絶縁耐圧は絶縁の強度を、絶縁抵抗は電気の流れにくさを数値で表すものです。絶縁耐圧と絶縁抵抗が意味するものは異なりますが、どちらも安全性の確保のために重要であることは変わりません。電気機器や回路を扱う企業は、絶縁耐圧と絶縁抵抗に関する基礎知識を押さえておくとともに、試験や測定を適切に実施しましょう。

アジア電子工業株式会社では、各種絶縁型電源を絶縁耐圧試験や絶縁抵抗測定を行った上で販売・出荷し、通信や交通、電力関係などさまざまな分野のシステムでご利用いただいています。スイッチング電源を活用したい場合は、ぜひお問い合わせください。

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