身の回りにはさまざまな電子機器があります。電子機器に用いられる部品の中でも、重要な役割を果たしているのがコンデンサです。スマートフォンをはじめとする、生活に欠かせない電子機器のほとんどには、コンデンサが使われています。
本記事では、コンデンサの役割や種類、選び方などを解説します。
コンデンサの役割とは?
電子回路を構成する重要な部品の一つに、コンデンサがあります。コイル・抵抗と並んで、3大受動部品と呼ばれています。受動部品とは、電力を蓄える・消費する・放出することができる部品です。
コンデンサはスマートフォンや車載機器、ウェアラブル端末など幅広い電子機器に使用されています。コンデンサが用いられている製品の一例は次のとおりです。
- モバイル機器(スマートフォン、タブレットなど)
- 家電製品(冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど)
- 再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電など)
- 自動車(ハイブリッド車、電気自動車など)
さまざまな製品に用いられているコンデンサの主な役割は、次のとおりです。
- 電気の貯蓄と放電
- 電圧の安定
- ノイズの除去
以下で一つずつ解説します。
1. 電気の貯蓄と放電
1つ目は電気の貯蓄と放電です。コンデンサは電気を蓄えることが可能です。蓄えた電気を放電することで、電源としても機能します。このような仕組みを活用しているのが、カメラのストロボです。ストロボはコンデンサに蓄えられている電気を放電することでランプが点灯します。カメラのストロボを焚くには瞬間的に高い電圧が必要です。しかし、通常、カメラは高い電圧を必要としていません。そのため、コンデンサに電気を蓄えておき、その電気をストロボ使用時に活用します。
2. 電圧の安定
2つ目は電圧の安定です。コンセントを通じて流れる電気は交流です。一方、電子回路は一般的に直流で作動します。交流を直流に変換する際は、整流回路と呼ばれる回路を用います。しかし、整流回路のみでは電圧が不安定になりかねません。そのため、コンデンサによって電圧を安定化させる必要があります。
3. ノイズの除去
3つ目はノイズの除去です。直流電流に含まれる交流成分は、電子回路の動作を不安定にさせるノイズのため、除去が必要です。その際に、コンデンサの「直流は遮断して、交流のみを通す」という特性を利用します。ノイズをコンデンサに流せば、ノイズを除去した直流のみを出力回路に送り込むことが可能です。コンデンサによって不要な要素を取り除くことで、安定した動作に繋げられます。
コンデンサにはいくつもの種類がある
コンデンサには次のとおり、いくつもの種類があります。
- アルミ電解コンデンサ
- セラミックコンデンサ
- フィルムコンデンサ
- タンタルコンデンサ
- 電気二重層コンデンサ
- マイカコンデンサ
それぞれの特徴について解説します。
1. アルミ電解コンデンサ
アルミ電解コンデンサとは、誘電体にアルミニウムの酸化皮膜を、陰極に電解液を使用しているものをいいます。アルミ電解コンデンサは、安価かつ容量が大きいのが特長です。ただし、サイズが大きくなってしまう、液漏れが発生して誘電体に影響を及ぼすといったデメリットもあります。
4. セラミックコンデンサ
セラミックコンデンサは誘導体にセラミックを用いています。セラミックの種類によって次の3つに分類することが可能です。
- 低誘電率型
- 高誘電率型
- 半導体型
セラミックコンデンサのメリットとして耐熱性の高さが挙げられます。
耐熱性が高いため、高温の条件下で使用可能です。またセラミックコンデンサは小型化できる上、容量が大きいというのも特長です。そのため、小型でありながら、多くの電気を蓄えられる製品を製造することが可能です。
さらに、高周波特性が良好というのもメリットです。セラミックコンデンサ以外のコンデンサは高周波信号を入力した際に信号が大きく減退してしまいます。しかしセラミックコンデンサであれば、高周波信号を減退させるインダクタンス成分が小さいため、大きな影響を受けずに済みます。
一般的に、セラミックコンデンサは電圧が増えるにつれて容量が減少します。使用する電圧によっては大幅に容量が小さくなるものもあるため、注意が必要です。
また、セラミックを誘導体に用いているため、外的衝撃に弱く破損が起こりやすいのが難点です。
5. フィルムコンデンサ
フィルムコンデンサは誘導体にポリエステルやポリプロピレンなどのフィルムを用いているものを指します。セラミックコンデンサに比べると大型になってしまいますが、エネルギーの損失が少ない上に、周囲の温度の影響を受けづらいのが特長です。ただし、誘電体フィルムの欠陥によって電流が漏れて、発火する恐れがあります。
2. タンタルコンデンサ
タンタルコンデンサとは陽極にタンタル、誘導体に五酸化タンタルを使用したコンデンサです。アルミ電解コンデンサほどではないものの容量が大きく、小型という点が特長です。また、アルミ電解コンデンサよりも寿命が長いというのも特長といえるでしょう。アルミ電解コンデンサの場合、電解液が蒸発するため寿命が短くなる可能性があります。一方、タンタルコンデンサであれば電解液を用いないため蒸発・液漏れの心配はありません。
しかし、故障によって発火にいたるリスクがあるため、安全への配慮が必要です。
3. 電気二重層コンデンサ
電気二重層コンデンサは容量が大きいのが特長で、アルミ電解コンデンサの1,000~1万倍以上に相当します。また充電・放電の回数に制限がなく、何度も利用することが可能です。
しかし内部抵抗が大きく、大きすぎる電流を流すと、発熱を起こしてしまいます。発熱した結果、電気分解によって電解液がガス化して、爆発する恐れがあるのが難点です。
6. マイカコンデンサ
マイカコンデンサは、天然の鉱物であるマイカを誘導体に用いているものをいいます。一般的に信号機器や医療機器といった高い精度と安定性が求められる電子機器に使用されます。
マイカコンデンサは高い耐熱性を持つのが特長です。しかし、製造工程で人の手を介す必要がある、天然に産出する鉱物を使用するといった理由から高価になってしまいます。また、サイズが大きくなってしまうのもデメリットです。
コンデンサの選び方
コンデンサを選ぶ際は次のような点に着目しましょう。
- 形状とサイズ
- 温度特性
- 耐電圧
1. 形状とサイズ
1つ目にどのような形状・サイズなのかを確認します。コンデンサの形状は、一般的にリード付きか表面実装かのいずれかです。形状の選択については、コンデンサではなく、実装する基板によるところもあります。
2. 温度特性
2つ目に、温度特性です。コンデンサを高温もしくは低温の環境の中で使用することもあるでしょう。コンデンサは周囲の温度に影響を受けやすい部品です。例えばセラミックコンデンサの場合、温度によって蓄えわれる電気の量が変化します。コンデンサを使用する温度の範囲に適したコンデンサを選びましょう。
3. 耐電圧
3つ目に、耐電圧です。耐電圧には直流・交流それぞれの耐電圧があります。コンデンサを選ぶ際は、用いる基板や機器に沿った耐電圧のものを選びましょう。
なお耐電圧は部品に印字されており、直線のバーがあれば直流、波線は交流の耐電圧ということです。
コンデンサの役割と種類を把握しておこう
コンデンサはコイル・抵抗と並び電子回路の基本となる部品で、三大受動部品といわれています。電気の貯蓄・放電・電圧の安定・ノイズ除去といった役割を担っており、ほとんどの電子機器に使われています。
コンデンサの種類にはアルミ電解コンデンサやセラミックコンデンサなど数多くあるため、それぞれの特徴を把握した上で適切なものを選びましょう。また形状とサイズ、温度特性、耐電圧なども併せて確認しましょう。
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