ヒューズを使用すると、製品が故障した際に電気回路を安全に遮断することができ、他の部品を破壊、また製品自体の発煙・発火を防ぐことが出来ます。しかしヒューズの選定を誤ると、不要溶断が起きたり、異常電流が流れ続け、発煙・発火などが発生したりする危険性があります。ヒューズの重要性を理解し、しっかり選定することが大切です。
ヒューズとは?
ヒューズとは、電⼦機器が故障したり、電気の使い過ぎなどで電⼦機器に⼤きい電流が流れたりしたときに、安全のために電気を遮断して機器を部品です。同じ機能を持った部品に遮断器(ブレーカー)があります。
ヒューズの種類
ヒューズにはさまざまな種類があります。形状としては、一般的に用いられるガラス管ヒューズ・高遮断容量のセラミック管ヒューズ・自動車用に用いられるブレードヒューズなどがあります。電気特性としては、電気の種類(AC/DC)・電圧・電流の大きさはもちろん、電気の遮断のしやすさによっても種類が分けられます。
ヒューズの選定方法
ヒューズを正しく選定すると、電子機器に異常電流が流されたときに電気を遮断し事故を防ぐことができます。ヒューズの選定を誤ると、不要溶断が起きたり、異常電流が流れ続け、発煙・発火などが発生したりする危険性があります。以下に、ヒューズを選定するにあったての一般的な手順、注意点について解説します。
- 使用する電気の種類を確認する
ヒューズを入れる回路の電圧 (AC/DC) と同じ種類 (AC/DC) のヒューズを選定します。
交流 (AC) 回路用ヒューズと直流 (DC) 回路用ヒューズではその遮断能力が異なるため、交流 (AC) 回路用と直流 (DC) 回路用ヒューズを取り違えて使用すると、事故につながる危険があります。
- 使用する回路の電圧を確認する
ヒューズを入れる回路の電圧より高い定格電圧を持つヒューズを選定します。
もし回路電圧より低い定格電圧のヒューズを使用すると、ヒューズが異常電流を安全に遮断できず、ヒューズが破壊され、火災や事故につながる恐れがあります。
- 使用する回路の電流を確認する
ヒューズが不要溶断を起こすことなく、異常電流を確実に遮断できるようにするには、回路に流れる下記の電流 (電流波形を含む) を把握する必要があります。
(1)定常電流
長期使用でヒューズが不要溶断を起こすことがないよう、ヒューズの溶断時間−電流特性が、ヒューズを挿入する回路の定常電流 ( 実効値 ) に対して十分なマージンを持つようにヒューズを選定します。
電源は一般的に入力電流がカタログ等に記載がありません。
入力電流の求め方はコラム「電力効率とは?」に記載しておりますので、電源の入力部にヒューズを挿入される際に参考にしてください。
必要なマージンはご使用状況によって異なりますので、実機にて評価して下さい。
(2)突入電流
突入電流は、一般的に電流の変化が複雑で、溶断時間−電流特性で評価することは困難です。そのため、放熱の影響が少ない短時間領域においては、回路のジュール積分 ( 回路に流れる電流の瞬時値のを2 乗しその値を時間積分したもの ) と、ヒューズの溶断ジュール積分を比較することにより、不要溶断が起きるかどうかの評価が行えます。電解コンデンサを使用している回路は、突入電流が流れる時間が長いため(数ms以上)、耐ラッシュ(タイムラグ・遅延)タイプのヒューズを選定します。弊社の電解コンデンサレスタイプの電源は、数10µ~100µs程度の時間しか突入電流が流れないため、一般的なヒューズでも不要溶断は起こりません。
(3)異常電流
起こり得る最大の異常電流を測定し、その異常電流を遮断できる定格遮断電流を持つヒューズを選定します。どの時点、どの時間で異常電流を遮断するかの判断は保護条件によっては極めて困難です。そのため、実機にてヒューズが異常電流を安全に遮断できることを確認して下さい。
ヒューズの定格電流は、定常電流に対しては十分なマージンがあり、突入電流でも不要溶断を起こさないが、異常電流に対しては確実に遮断できる値である必要があります。
ヒューズの重要性
ヒューズを使用することで、製品が故障した際に電気回路を安全に遮断することができ、他の部品を破壊、また製品自体の発煙・発火したりすることを防ぐことが出来ます。ヒューズを決定する前には、必ず選定したヒューズを実際にご使用になる機器に取り付け、想定した条件で動作するか確認して下さい。ヒューズの選定で困った際には、御検討されているヒューズメーカーに相談して下さい。