ねじやナットなどのトルク管理は、製品の品質向上、安全性の確保、コスト削減のために不可欠な要素です。
締付けトルクが小さすぎるとねじが緩み、反対に締付けトルクが大きすぎるとねじが破損する危険性があります。
適切なトルクでねじを締めることは、製品の故障を防ぎ、長期的なコスト削減にも寄与します。トルク管理の重要性を理解し、実践することが非常に大切です。
締付けトルクとは?
締付けトルクとは、ねじやボルトを締める際に回転方向に加える力のことを指します。
ねじやボルトを締める際に、適切な締付けトルクを設定することで、被締結物が適切に固定され、振動や負荷に耐えることができます。
この締付けトルクが適正でないと、ねじやボルトの緩みや破損などのトラブルの原因となってしまいます。
トルクの単位
トルクの単位は[N·m](ニュートンメートル)です。これは、力:[N](ニュートン)と回転軸からの距離:[m](メートル)を乗じたものです。
1[N·m]は、1[N]の力を回転軸から1[m]の距離で作用させたときのトルクに相当します。トルクの単位は以前まで[kgf・m](キログラムフォースメートル)や[kgf・cm](キログラムフォースセンチメートル)が用いられていましたが、計量法の改正に伴い、SI単位(ISO国際規格)への移行が義務づけられたため、現在では力の単位が[N](ニュートン)、トルクの単位には[N・m](ニュートンメートル)が使用されています。
1[kgf]≒9.8[N]であるため、
1[N・m]≒0.102[kgf・m]=10.2[kgf・cm]
1[kgf・m]=100[kgf・cm]≒9.8[N・m]となります。
締付け管理方法
ねじのトルク管理方法としては、「トルク法」「回転角法」「トルクこう配法」がJIS B 1083「ねじの締付け通則」に規定されています。
以下に各管理方法の概要と特徴を説明します。
- トルク法
弾性域にて締付けトルクと締付け軸力が線形であることを利用した締付け管理方法です。軸力にバラツキが生じやすいです。
- 回転角法
ボルト頭部とナットとの相対締付けの回転角度の大きさを締付け指標として、初期の締付け力を管理する方法です。弾性域、塑性域で用いることができます。軸力のバラツキは抑えられますが、弾性域ではスナッグポイント(ボルトやナットが被締結体に密着する点)がバラツキやすいです。
- トルク勾配法
回転角に対するトルクの変化率を締付け指標として、初期の締付け力を管理する方法です。締付け時に強い軸力が加わるため、ボルトやねじの再利用は基本的にできません。管理のために必要な専用の締付け工具や測定器が比較的高価です。
この中のトルク法は、ねじを締付ける際に締付けトルクを指標として締付け管理を行う方法で、広く一般に用いられています。
トルク法による締付けは、締付け作業時に締付けトルクだけを管理すればよいため、特殊な締付け工具を必要としない作業性に優れた方法です。
トルク管理を行う基本的な工具として、トルクドライバーやトルクレンチが使用されます。
締付けトルクと軸力の関係
ねじに締付けトルクをかけると、ねじの軸方向に引張力が発生します。 この引張力のことを軸力といいます。この軸力によってねじは締結を行います。
締付トルクと軸力は以下の関係式で求めることができます。
T=K・F・d
T:締付けトルク[N・m]
F:軸力[F]
d:ねじの呼び径[m]
K:トルク係数
トルク係数は締付けトルクと軸力との関係を表す比例定数であり、ねじと被締結物の接触面の摩擦係数によって変化します。
締付けトルクの検査方法
締付けトルクの検査方法は、ねじがどの位のトルクで締付けられているかを確認するための重要な手段です。
代表的な締付けトルクの検査方法として「戻しトルク法」「増し締めトルク法」「マーク法」があります。
以下に各検査方法の概要と特徴を説明します。
- 戻しトルク法
締付けたねじを緩み方向に回転させ、ねじが回転し始めた時のトルク値を確認する方法です。
比較的容易に確認できるが、検査後にねじを再度締める必要あります。
主に小径のねじの検査に適用されています。
- 増し締めトルク法
増し締めトルク法は、締付けたねじを締付け方向に回転させ、ねじが回転する時のトルク値を確認する方法です。
回転し始めるのが明確に分かる場合は正確に測定が可能です。
- マーク法
マーク法は締付けたねじと被締結物にマークを付けた後に一旦ねじを緩め、再度マークの位置まで締付けた時のトルク値を確認する方法です。
マークを付ける手間がかかりますが、バラツキが少なく、検査前と同じ締付け状態にできます。
トルク管理の重要性
トルク管理は、製品の品質向上、安全性の確保、コスト削減のために不可欠な要素です。
締付けトルクが小さすぎるとねじが緩み、反対に締付けトルクが大きすぎるとねじが破損する危険性があります。
適切なトルクでねじを締めることは、製品の故障を防ぎ、長期的なコスト削減にも寄与します。トルク管理の重要性を理解し、実践することが非常に大切です。
当社製品の適正締付けトルクについては、FAQよくある質問Q20を参考にして下さい。